四季の彩りを暮らしに取り入れ
家族とともに時を重ねる平屋
石巻市 Sさま邸
東日本大震災で被災されたSさんが、新しく手に入れたのは南北に長い約200坪の土地。まずは仕事を再開すべく小さな工場をつくり、続いて住宅の建築に取りかかりました。新築にあたってSさんご夫妻が希望したのは平屋。プランづくりではSさんご自身がラフスケッチを描き、ヒノケンがそのイメージをひとつひとつ形にし、念願のお住まいが完成しました。
各部屋は、コンパクトな中庭を取り囲むようにコの字形にレイアウト。左手に広いLDKや和室、中央には水まわりやご両親の寝室、右手にはSさんご夫婦の主寝室を配しました。リビングの南と中庭に面したところには大きな開口部と回廊を設け、庭の眺望はもちろん太陽光をも存分に採り込むしかけに。ダイニングからは窓越しに主寝室の様子をうかがうこともできます。
平屋ならではの開放感を演出するためのポイントは大きく2つあります。1つは「廊下」。広くゆったりとした廊下が、室内空間に視覚的な広がりをもたらします。もう1つは外の景色を採り込む「窓」です。住宅性能を保ちつつ開口を大きく取るには、窓の性能が重要です。このお住まいでは、環境先進国スウェーデンのガデリウス社製のトリプルガラスの木製サッシを全窓に採用し、開放感と住宅性能を両立しています。
里山をイメージした中庭には、ヤマボウシやモミジなどの落葉樹や小径を彩るハーブなどを植栽。外構には古い枕木や常緑のシラカシをあしらい、四季の変化も眺望に織り込んでいます。「庭を見ながら刺繍をするのがやすらぎの時間です」と奥さん。縁が紡いだこの家には今、穏やかで豊かな時間が流れています。
Reported by Replan
外壁は、湿気や色褪せにも強い樹脂モルタルを質感の美しい校倉塗りに
オーストリア産枕木の外構と校倉塗りの外観が、瀟洒な雰囲気を漂わせる
中庭は「里山」をイメージし、庭木や植栽の剪定にも施主が参加
大きな窓で明るく開放感のある玄関。床はナラの無塗装材、空間の色はブラウン系と白の2色で統一した
玄関からダイニング、和室、寝室と空間をつなぐ、ゆとりある廻り廊下
震災をきっかけに、できるだけものを持たない生活になったというSさん宅は、ダイニング・キッチンまわりもすっきり片付いている
広々としたダイニング。その窓越しに主寝室が見え、別室にいながらお互いの様子を気づかうことができる
暖房はパネルヒーター。住宅性能が高いため、夏の盛りでもエアコンは除湿目的で稼働させるだけで快適だという
Sさんの趣味部屋。幼少時から模型づくりが趣味だったというSさんの長年のコレクションが整然と並ぶ
リビングと寝室をつなぐ広い空間は、廊下を兼ねた多目的コーナーに。奥さんが椅子とテーブルを置いて、刺繍と庭の景色を楽しんでいる
DATA
竣工年:2014年1月
坪数:約61坪
工法:木造平屋建て・在来軸組工法
暖房機器:パネルヒーター